1月26日(日)まで小諸高原美術館にて開催されていた「日本のアートディレクション展 2024」「2024 長野ADC展」に行ってきました。
「ADC」とは「ART DIRECTORS CLUB」のこと。
様々なジャンルのクリエイターが個人の資格で参加・運営する会員組織です。
ADC展は小諸高原美術館で毎年この時期に開催される展示で、その年の優秀なデザインを見ることができます。

展示室は全国と県内で分かれており、グラフィックデザインに限らず、プロダクト・広告・映像などの作品も並びます。

「日本のアートディレクション展 2024」展示室


「2024 長野ADC展」展示室
実際のフライヤーが装飾として使われていました
思わず「ナイスアイデア!」と言いたくなる発想力豊かな作品群に感心しきりで、今年も良い刺激を受けてきました。
新聞広告のアイデア



沖縄セルラーによる沖縄の自然保護活動を伝えるための新聞広告は、生物たちが紙面のあちらこちらで登場する大胆なデザイン(なんと原寸大だそう!)
毎日読む新聞こそ、想像とは違う質感が混ざっていると、驚きと共に強く印象に残るなあと感じました。
実際に何も知らずに新聞を開き、この広告に出会ってみたいです。

こちらは秋田魁新報社、創刊150年の創刊記念日2月2日付1面。
読者に感謝の思いを伝える一輪の花のイラスト。
2月の秋田の寒い朝を想像すると、なんとも心温まる素敵なデザインだなと思います。
ブランド力を活かし、要素を絞ったVI(Visual Identity)
世の中に浸透しているイメージを抽出することで、シンプルなイメージでありながら、それらしさを納得させられる作品もありました。


不二家が2023年9月に刷新したVIは、マスコットキャラクター「ペコちゃん」のお口がモチーフ。
一度このマークがペコちゃんの口と結びつくと、もう忘れようがありません。
これだけでどうして不二家と分かってしまうのだろうという驚きがある、知名度の高さに支えられた思い切りの良いデザインです。



キユーピーとららぽーと「デザインパーク」がコラボしたVIは、よく見慣れた赤い斜めの格子柄を使ってデザインを展開。
シンプルな図柄の組み合わせでありながら、誰もがキユーピーと認識できるブランド力が素晴らしいです。
紙エプロンもこのパターンをあしらえば、たちまち子どもたちがマヨネーズに!
ちなみに私は「キユーピー」の正しい表記は「ユ」が大文字であるということを食品系展示会の仕事を通してはじめて知ったのですが、その理由がこちら。

▲ キユーピー 企業サイト FAQ より
なんとデザイン(見た目のバランス)優先!!
「そんなことしていいんだ!」と感じるほど柔軟で大胆なクリエイティブへの姿勢は、メジャー企業だからこそ取れるスタンスと言えるかもしれません。
二面性のあるデザイン


メリーチョコレートをベースとしたブランド『ルルメリー』のパッケージは、レトロな雰囲気でありながら、気品も感じさせるデザインです。
緻密に描かれた植物や白鳥のイラストはどこか懐かしいのに、ブランドカラーであるブルーが鮮やかで、さらに金や銀が部分的にあしらわれていることで、華やかな特別感があって素敵。
ギフトとして渡す方も受け取る方も、ワクワクした幸せな時間が過ごせそうです。


兵庫県城崎温泉『発酵餡菓 うかわ』のパッケージは、伝統と新しさを感じるデザイン。
250年の歴史を持つ酒蔵の発酵技術を生かした和菓子店ということで、筆文字のようなロゴタイプの「うかわ」には、その背景にある歴史が、スペイン人作家が描いたという浮世絵のようでいてポップな色づかいのイラストには、伝統だけにとらわれない自由さが表れているように思います。
「レトロと気品」「伝統と新しさ」テイストが違うものなのに、それが組み合わさることで、どちらも人を惹きつける印象的なデザインになっていて、商品のコンセプトを明確に伝えることにもつながっている…。ブランドをパッケージで表現するのに、とても効果的なデザイン手法だということがわかります。
ターゲットに訴えかける広告

栄養食品のカロリーメイト広告です。「人間に栄養を」のキャッチコピーと共に、最近よく見かける認証システムが描かれています。
「人間」というターゲットをコンピューター的なものと比較して表現されると、より「生きている自分」へ、「生きているあなたに必要」というメッセージが強く伝わってくるような気がします。
長野ADCの作品
長野県内のデザイナーさんの作品からもご紹介。



トドロキデザインさんによる「村展2」の展示の様子です。
長野県の村の名前と形がトゲトゲとした光のようなかたちに抽象化され、展示されていたそうです。
こちらの展示は昨年で2回目だそうで、もしかしたら数年後には数も減ったり、形が変化したりするかもしれない、本当に星の光のような「村」という存在がこのようにグラフィックとして形になり、展示の記録として残されることが素敵だなと感じました。
また、村出身の私にとっては自分の村がこういった形で誰かに見てもらえるのが嬉しいですね。
(地元の麻績村もちゃんとありました!)
大きな課題を一挙に解決するアイデアを出すことは難しいですが、私たちも小さなことから確かにコツコツと、より良い世の中につながるように日々のクリエイティブを積み重ねていけたらと思います。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
市立小諸高原美術館・白鳥映雪館
山の上のとんがり屋根の美術館。見晴らしがとても良いです。
企画展以外では、白鳥映雪の日本画などを鑑賞することができます。
〒384-0041 長野県小諸市菱平2805-1
〈開館日〉火曜日〜土曜日 9:00 – 17:00(12月~3月は午後4時まで)
〈休館日〉月曜(祝日の場合は開館)、祝日の翌日、年末年始(12月29日~1月3日)、展示替えに伴う休館
※詳しくはホームページをご確認ください。
アドミュージアム東京

小諸でのADC展は終了してしまいましたが、広告デザインにご興味のある方は、カレッタ汐留内にある「アドミュージアム東京」もおすすめです。
入場無料で広告の歴史を学べたり、クリエイティブに潜むアイデアに驚いたり、懐かしのCMで盛り上がったりできるので、お近くにご用事のある時はぜひ立ち寄ってみてください。

〒105-7090 東京都港区東新橋 1-8-2 カレッタ汐留 地下2階
〈開館日〉火曜日〜土曜日 12:00 – 18:00(入場無料)
※詳しくはホームページをご確認ください。